【感受性型映画解説】七人の侍 前編/黒澤明監督
巨匠の映画を観ました。
最初に観たのは結構前。
当時は最後までたどり着けず、早送りしながらの観覧。
けれど今回は違いました。
音で語られる映画
物語の始まりは、あの「地鳴りの音」。
今まで聞いたことのないような、
観客の心を掴んで離さない、震える音。
馬の音、集団の動き、風、足音、雨の気配――
それらすべてが**“生きている音”として鳴っている。**
これはもう、効果音ではなく主役。
人間が動くときに生まれる音がそのまま物語になる。
音で感情が揺さぶられ、
ストーリーが始まる前にノックアウトされる。
モノクロームが語る空気
色がないのに、豊か。
光と影、わずかなトーンの違い、質感の表現。
そして突然挟まれる、美しい眉のない女性のカット。
戦いの泥臭さの中に、静かに浮かぶ美しさ。
菊千代と勘兵衛
休憩後、菊千代の物語へ。
彼は最初に勘兵衛に会っている。
でも、勘兵衛は“武士らしさ”の違和感にすぐ気づく。
この映画の核は、彼らのようなキャラクターのやり取りにある。
勘兵衛は理論派でリーダー気質、でも人情味がある。
村人たちへの態度や若者への眼差し、
信じているけれど期待しすぎない、絶妙な距離感。
それが彼の安定感につながっている。
音が描く心の変化
百姓たちの低音のエネルギーで始まる物語。
でも、希望が見えた瞬間に音が軽くなる。
明るく、甲高く、抜けるような音。
心の動きと音のトーンがリンクしている。
これはまさに「言霊」と同じ。
声が高いとき、低いとき、
その背景にあるエネルギーが映画全体に染み込んでいた。
初回との違い
初めて観たときは、
光と影、構図、モノクロの美しさにばかり目がいって、
音にはまったく気づかなかった。
今回は違う。
視覚、音、感情――すべてが繋がっていた。
そして、キャラクターそれぞれの“人間くささ”も際立って見えた。
まとめ(前編)
この映画に出会えてよかった。
本当に、最高でした。
中盤~後編については、また別の機会に書こうと思います。
ちなみに…
久蔵はルパン三世の石川五右衛門、
菊千代はドラマ『西遊記』の堺正章の悟空に似ていると思っています。
でもその話はまた今度。
映画って、本当に奥が深い。
この映画から情報が多すぎて
一度に簡潔にまとめることは難しい作品。
1954年作品
高度成長
これから文化というものがどんどん出てくる時代の象徴する映画。
映画界の巨匠たちが影響される意味も理解できました。
よりカメラワーク技法を理解していたらより面白いかもな後編。